「決断」と銘打たれた文章です。
トッププロテニスプレイヤーの伊達公子さんの、引退の理由をご自身が自分の言葉でブログに述べられています。
多くの気づきと学びをいただける内容です。
世界のトッププロと言っても人間です。
また、スポーツを仕事にして、結果を出すということ。
健康に関して…
様々なことを示唆してくれる文章です。
何かの参考になればと思い、以下を転載させていただきます。
伊達公子さん、有難うございます。
お疲れ様でした。
これからのご活躍も祈念しています。
以下、ブログより転載です。
URLも貼っておきます。
https://lineblog.me/datekimiko/archives/67288732.html
『そう遠くない日』と言っていた日がとうとう訪れました。
伊達公子、再チャレンジにピリオドを打つ決断をいたしました。
いつになったら心の声が響いていくるのか…
そう気付くまでコートに立ち続ける気持ちでいっぱいでした。
2008年4月に再チャレンジを始めてから約9年半。
10シーズン目を迎えた2017年は膝の軟骨移植手術を経て5月に復帰。
岐阜のカンガルーカップで復帰を果たし、これからという気持ちが膨らむ中で、肩の古傷の痛みがひどくなってきました。
膝関節も痛みはないものの100%気にしないで動けるとはなかなか言えない中で、思うように大会に出場すらできていません。
大好きなテニスと向き合い、ずっと勝負に拘ってきましたが、今は勝負をすることよりも毎日の体調を気にしながら練習の量、質を考えていなければならない日が多くなってきています。
それでも日本にいながら調整しているときは、比較的自分の時間軸で動くことができます。
膝や肩の調子が悪ければ練習を急遽休んだり、トレーニングの内容を変更してもらったりすることもできます。
しかしツアーの中にいると、自分の時間軸だけでは動けないのが現実です。
当然、時には体調が悪い日があったり、疲労や怪我をすることもあり、練習をキャンセルすることがゼロではありませんが、それはほんの稀に起きること。
しかし今の私にはそんなことがしばしば起きるのです。
ツアーの中にいてそのような状況が自分でも納得できないし、ツアー仲間にも迷惑をかけることになり歯がゆい気持ちの連続です。
7月のアメリカ遠征に3週間行った時にそんなことを痛感させられました。
膝の手術を経て痛みを乗り越え、リハビリを乗り越え、トレーニングに取り組み、コートに立てるレベルにまで来れたことは、大きな大きな成果でした。
しかし怪我前のレベルと比べると…やはりギャップを埋めることはなかなか簡単なことではないことを感じています。
なかなか埋まらないそのギャップと向き合い続けることに一喜一憂する日々。
ツアーの中にいるとやはり勝負とも向き合わなければなりません。にもかかわらず勝負よりも自分の体と向き合うことで精一杯。それでなくても若い20代のプレイヤーたちと向きあうだけのフィジカルを持ち合わせなければならないのに、体を追い込みたくても追い込めないことが多くなっている。
プロである以上、ツアーで戦う、とは1年を通して世界を飛び回り、WTAで戦うことを目指し、グランドスラムで戦うということ。しかし今の私では大会数を減らしてもフルスケジュールで戦い続けることはかなり厳しい現実だと受け入れざるを得ません。
もう痛みと向き合わなくてもいいんじゃないか……
痛みを我慢する必要もないんじゃないか……
そんなことを思うようにもなってきました。
もう一度、思い切りコートを駆け巡り、自分らしい速い展開のテニスをしたい!という想いを断ち切ることは簡単なことではありませんでした。
私ならきっとできる!とずっと信じていました。
今でもその想いがないと言ったら嘘になります。
でもどこかでテニスに区切りをつけなければならない時があるのならばそれが今ではないかと思ったのです。
今は今しかできない、プロテニスプレイヤーとしての残り限られた時間をしっかりと受け止めながら過ごしたいと思っています。
怪我があったとは言え、楽しかったツアー、トップ50でプレーできたこと、多くのサポートへの想いなど充実した9年半のいろいろな想いは、有明が終わってからまたblogを通して、ゆっくりと振り返る機会を持ちたいと思います。
今は肩と膝に向き合いながら、Japan Women’s Openでの大会出場へ向けリハビリ、トレーニング、練習の日々にエネルギーを全て注いでいます。
この有明での大会が私にとっての再チャレンジ最後の大会となります。
引退をする決断をした今、これまでサポートをしてくださったたくさんの方々に、最後の戦う姿を記憶に留めていただきたいので、大会前に決断をお伝えした上でコートに向かいたいと思いました。
9月11日から始まるJapan Women‘s Openは有明コロシアムこそ使用しませんが、有明のコートはたくさんのメモリーが詰まっている場所です。
どんなプレーがどこまでできるか未知数ではありますが、ひとまずは私自身の決断のご報告と同時に再チャレンジのピリオドを打つ瞬間を多くの方と共有できればと思います。
伊達 公子